![]()
![]()
おおお、自分も挨拶するのでありますかあ。 ど、ども、渋江であります。物書きやっております。でも本売れないんです。何ででしょう。一生懸命調べ物して、書いてるんでありますがあ。 え? そんただこと聞いてねえ? はあ、失礼しましたでんす。 ええと、自分は弘前の医者の七男でんして、子供のころから本ば読むのが好きでありました。してからに、頭がいいと、周りが言うもんででんすね、十五歳のときに師範学校の試験ば受けたですよ。 本当は十八にならんと受けたらいけん試験だったでんすがね、あっさり受かって、特別に入学させてもらったでんす。 だども、学校出ても教師になるのはいやでんして、東京に出て来たはいいですが、思うように食えませんで、四苦八苦しとります。 もうこんな暮らし十年近くやってるであります。吟香先生始め、多くの先生が面倒見てくれ、何とか生きておりますが、早く本が売れて、堂々と歩けるようになりたいでんす。 ちなみにでありますね、自分が書いている本は、すんごく真面目な本であります。翻訳なんぞもやっております。 自分の親は、芝居が無類に好きでありましたが、自分は本を読むほうが好きなのであります。 それはいいのでありますが、実は今度両国にメスメリズムの見世物が掛かるそうなのでありますが、見物料が高くて見にいけないかもしれないのが悲しいのであります。 誰か、お金を貸して欲しいでんす。 |
イラスト予定 |
ヘレンさんのこと どうもヘレンさんは気が短すぎる。おまけに、行動力がありすぎる。 きっといい物の食べているんでしょうなあ。あの元気、少し分けて欲しいであります。 ちなみに、ヘレンさんは、少し年配の男性に甘いところがあります。その反面、自分のような人間には非情に厳しいです。きっと、将来旦那さんを尻に敷くであります。 美七江さんのこと 美七江さんは、いい所のお嬢さんだけあって、時々すごく気品があります。それでいて、武道に長けていて、驚きであります。医者の倅である自分は、まったく武術が出来ません。ちょっと尊敬します。 ちなみに、美七江さんの眼鏡は、自分のものの数倍はする高価な代物です。やはりお大尽は違います。ちょっとだけ仲よくなりたく思いますが、どうも自分は避けられているような気がします。何故でありましょう? 真奈さんのこと とても不思議な人でありますね真奈さんは。話を聞いても、絶対に核心に迫れないであります。ボケたふりがうまいのでありましょう。 きっとものすごい天才に違いないと睨んでいるのでありますが、ヘレンさんも美七江さんも、真奈さんは「天然」だというのであります。 ところで、天然てなんのことでありましょう? 妖怪のこと 妖怪なんてこの世の中にいるはず無い。と二十ん年間思って生きておりました。しかしながら、ヘレンさんたちの語る話は、真実にしか聞こえないであります。 やはり妖怪はいたのであります。したら、自分が最近興味を持った、精神世界に入り込むメスメリズムも、きっと奥の深い世界に違いないでありますね。 それはいいのでありますが、九ちゃんや十二様は、いったいどんな姿をしているのでありましょう。すごく知りたくあります。 悪魔のこと 西洋にはとんでもない人たちがいたものであります。神様を追いやる為に、その反対勢力である悪魔と手を結ぶなど、自分の乏しい発想では思いも寄らないであります。 最初にこんなこと考えた人は、凄いであります。でも、間違っていると思うです。 それに生贄にされそうになるのはもうごめんであります。 吟香先生のこと 昨日もお金の無心を断られたであります。最近の先生は、偉くケチであります。どうも息子さんにおもちゃを買いすぎているようであります。 そんな育て方をしたらろくな子供にならないとおもうであります。 きっと放蕩絵描きか、役者にでもなってしまうのではないかと思っておりますが、もちろん吟香先生には言えないのであります。 せめて、一円でいいから恵んで欲しいであります。 今日の昼飯のこと 米びつの底にちょっとだけ米が残っていたので、おもゆを作ったであります。でもおかずが、沢庵しかなかったので、大屋さんに味噌を借りに行ったであります。したら、哀れだと言ってアンパンを一個貰ってしまったであります。だんだん人に物を貰うのが平気になってきたであります。これはまずいかもしれないと思うのであります。 |
|
へへへ、渋江のあんちゃんにはおいらの姿が見えないから、こっそり、古いメモ帳も覗いてみたんだ。 このあんちゃん、いろんなこと知ってるね。 たとえばこれ 「輪廻転生」 人間は、死んだあとその魂が生まれ変わると言われてるようでんすが、西洋では、前の人生の記憶を持った子供がおるそうであります。決して空想の産物でない証拠に、その前の人生をば知って居る人と話までしたと言うから驚きであります。これは本の題材にしたいであります。 面白いね。こんなのもあるよ。 「空想科学」 西洋では、最近空想科学小説というものが流行っているそうであります。宇宙へ行ったり、時間を自由に行き来したりする小説だそうであります。今度読んでみたいと思ううのでありますが、洋書は高いでんす。森さんにでも、買ってくれるよう頼んでみるであります。 この森さんて、お金持っているからって、よく渋江のあんちゃんが仲良くしている医者の森林太郎って奴だな。鴎外とかって名前で文章も書いているから、競争相手なのに、なんか情けないぞ渋江のあんちゃん。 あ、こんあものまである。 「西洋式の下着」 男性は、猿股を短くしたようなものをはいているでありますね。女性は、ズロースという、ふりふりした股引をはいて、上はコルセットというもので胴をきゅっと締めるようであります。そして、乳にはカップをあてているので、西洋人の女性は、大きな胸で細い胴をしているのでありますね、感動であります。一度でいいから本物を見てみたいであります。 …あれでも一応、男なんだねえ。ちょっと安心したぜ。でも、親分は、コルセットなんていうのしてないなあ。おいら、見たこと無いぞ〜 今度こっそり、たんすの中捜してみようかな。へへへ。 ところで、これって何だろ? 「地磁気測定」 帝大の田中館教授が、夏の休暇の間を利用して、各地の地磁気というものを測っているであります。もしかしたら、これで、地底世界のことがわかるのではと期待したのでありますが、教授はそんなことないだろうと怒ったのでありまス。何故でありましょう? 地磁気って何かなあ? 食べ物かなあ? 親分に聞いても知らないだろうしな〜、どうやって調べようかな、へへへ。 あれ? この最後に書いてあるのは、一番新しいメモみたいだな。 東京消滅計画??? 暗黒東京と東京を入れ替える、ってところで終わってるなあ。これ書いた後、渋江のあんちゃん、どっか行ったきりなんだけど、どうしたのかなあ? 親分は行方知らないのかなあ? ふに? |
![]()
![]()
岸田吟香先生のページの進むであります。
![]()
ジョサイア・コンデル先生のページに戻るでんす。
![]()
目次にば、戻るんでんす。
|
|||
|
|