Valentine's story
日本のどこかにある、至って普通の中学校。
その普通の中学校に、普通ではない少年達がいた。
そのうちの一人が、1階の廊下でぼやいているこの少年である。
その手には、バレンタインという今日にふさわしい物…チョコレートがあった。
…ただし、複数の。
「はぁ、これで何個目だー?こんなに貰っても食えねぇよ…」
少年の名は富田潤。
その端麗な容姿と親しみやすい態度から、女子に大人気の中学一年生である。
「しゃーねーな、女の子には悪いけどアイツにやるか」
そう呟き、少年はもう一人の「普通ではない」少年のいる場所に向かった。
「いやーこれで2月を乗り切れるぞー!」
その少年は1階の特別棟にいた。
名前は室井律。
整った顔立ちと儚げな雰囲気で、2,3年の女子から人気の高い中学一年生。
彼の手にもいくつかのチョコレートがあった。
「おーいリツー」
「あ、ジュン」
「お前チョコいくつ貰ったよ?」
「29個。ジュンは?」
「30個。食いきれんからお前にいくつかやる」
それを聞いて律は少し嫌そうな顔をする。
「ん?嫌なのか?」
「いや…それを渡した人は、ジュンに食べてもらいたかったんじゃ…?」
「俺一人じゃ全部食う前に腐っちまうし、どうせなら誰かが食ったほうがいいだろうが」
そっか、と律は呟き、潤が差し出したチョコを受け取った。
そして放課後。
二人はチョコを食べながら歩いていた。
「なーリツ」
「んー?」
「今日は『本命の人』からチョコ貰わなかったのか?」
「むぐっ!?」
唐突な質問に思わずチョコを喉につまらせる律。
「ケホッケホッ、い、いきなり、何?」
「いきなりも何も、この流れからすりゃ普通の質問だろ?で、貰ったのか?」
「…貰ってないよ。今文芸部に来れるの僕だけだし」
「あーそっか。受験期間だもんな」
そう、2月14日はまさに受験シーズンであり、律の『本命の人』との接点は全く無いのである。
「そーんな律っくんにローホーだよーんっ!」
「うわぁっ!」
いつもより高いテンションで文芸部「元」副部長、一条光が現れた。
「あ、やーヒカリ、今日はいつもよりハイテンションだねえ」
「あ、わかるジュンくん?今日はバレンタインだから、チョコをたーくさん貰ったのだー!」
「そりゃよかったなー」
律は二人のテンションについていけず、ただぼーっと立っていた。
そこを潤がうまくフォローする。
「そうだヒカリ、なんかローホーとか言ってたけど、何?」
「ふっふーん、ぢつはねー、月夜ちゃんからズーバーリ、律っくんへのチョコを預かってきてるのだー!」
「……………………え?」
律は、その言葉を理解するのに時間がかかった。
「………え?え?ええっ?」
驚きのあまり言葉が出ない。
「いやーまあ、義理って言ってたんだけどねー…まあ悪い感情があるわけではないって程度にしとこっか」
「いやー、ツクヨは鈍感だから自分の気持ちに気付いていないだけかもしんねーぞ?」
そんな二人の声は、もはや律には届いていなかった。
自分のことをどう思っていようが関係ない。
想い人が自分にチョコをくれた。
今の律にはそれで充分だった。
気付くと、頬に冷たいものが流れていた。
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なんだろ、この「無理やり終わらせた」みたいな…。
そんなつもりなかったんですがね。
ちなみにジュンは異世界の人だったりします、富田は偽名です。
まあそれについては今後語れたらいいなあ。(願望)
恋愛ものを書くのは割りと楽しいです。