書評データベース(2007年度12月分)

 

■2007年12月に紹介した本■

 川の光                松浦寿輝     中央公論新社
 競馬無敵の「孫子流21攻略」     清水成駿     ベスト新書
 挑発者                東 直己    角川春樹事務所
 転生                 篠田節子     講談社
 東京・地震・たんぽぽ         豊島ミホ     集英社
 BOSS               堂場瞬一     PHP研究所
 Hello,CEO          幸田真音     光文社
 反転 闇社会の守護神と呼ばれて    田中森一     幻冬舎
 約束の地で              馳 星周     集英社
 ゆうちょ銀行 民営郵政の罪と罰  有田哲文/畑中徹  東洋経済新報社
 アドニスの帰還            安東能明     双葉社
 朝顔はまだ咲かない          柴田よしき    東京創元社
 犬身                 松浦理英子    朝日新聞社
 渾身                 川上健一     集英社
 幸福日和               盛田隆二     角川書店
 ゾラ・一撃・さようなら        森 博嗣     集英社
 ザ・小学教師                      宝島社
 似顔絵捜査官の事件簿         坂本啓一     中経文庫
 間違いだらけの地震対策        目黒公郎     旬報社
 REVERSE リバース       石田衣良     中央公論新社
 ロスト・チャイルド          桂 美人     角川書店
 追伸                 真保裕一     文藝春秋
 鉄槌                 高田 侑     双葉社
 第四の闇               香納諒一     実業之日本社
 寅さんは税金を払っていたのか?    大村大次郎    双葉社
 妻と罰                土屋賢二     文藝春秋

【あ行】

<本紹介>
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【ジャンル】ミステリ
【著書名】 アドニスの帰還
【著者名】 安東能明
【出版社】 双葉社
【初 刊】 2007年9月25日
【金 額】 1800円+税
【カバー文】2万人ものブラジル人出稼ぎ労働者が暮らす大浜市・聖市街。こ
      の街で司法通訳人を務める日系3世の片桐エリザは思わぬ事件へ
      と巻き込まれていく。それは彼女の過去に深く関係することだっ
      た…。『小説推理』連載を単行本化。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
 多くのブラジル人が暮らし、トラブルが絶えない大浦市。この街で司法通訳
を務めるエリザは多忙な毎日を送っている。「ブラジルから暗殺者が入国して
いる」―ある日彼女が耳にした噂は驚くべきものだった。そのターゲットとは
…。
 物語は、警察の民間通訳人の日系ブラジル人ハーフが主人公で、ブラジルか
ら暗殺者によって事件に巻き込まれていきます。日本とブラジルの国事情や歴
史がうまく展開に絡んでいきますが、ブラジルの闇部分にも焦点が当てられ、
ラストのどんでん返しも良かったです。ただ、欠点として、多少無理ある部分
もありましたが、全体的には読みごたえがありました。

<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】連作ミステリ
【著書名】 朝顔はまだ咲かない
【著者名】 柴田よしき
【出版社】 東京創元社
【初 刊】 2007年7月31日
【金 額】 1500円+税
【カバー文】高校時代にいじめに遭ったことから、ひきこもりとなった小夏。
      悩みつつ健気に生きる彼女と、小夏を支えつつ青春を謳歌する秋。
      2人の少女が織りなす、感動の青春ミステリ。『ミステリーズ!』
      掲載に書下ろしを加え単行本化。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
 あたし、鏡田小夏、19歳。このマンションの一室がたったひとつのあたし
の城。高校時代のいじめに遭って、ひきこもりとなったあたしを訪ねてくるの
は、親友の秋のみ。こんなひきこもりのあたしだって、恋や親のことで悩む。
健気で一途な小夏、天真爛漫でイマドキの女の子の秋、そんな二人の少女が織
りなす、ささやかな謎解きストーリー。
 本書は6つの作品が収録される連作作品で、19歳の引きこもりの小夏が様
々な謎解きを通して成長していく物語です。ミステリというよりも主人公の成
長物語という方が相応しいとも思いますが、他の登場人物も存在感があり、ひ
きこもりの生活から段々と抜け出していく主人公の過程も中々良かったです。
ただ、ミステリ部分が弱いのが難点でもありました。

【か行】

<本紹介>
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【ジャンル】小説
【著書名】 川の光
【著者名】 松浦寿輝
【出版社】 中央公論新社
【初 刊】 2007年7月25日
【金 額】 1700円+税
【カバー文】平和な川辺の暮らしは失われた。晩夏、安住の地を求めてネズミ
      一家の冒険が始まる。足元で脈動する世界に優しいまなざしを向
      け、柔らかい魂の手触りを伝える物語。『読売新聞』夕刊の連載
      を加筆し単行本化。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
 物語は、父ネズミと子ネズミ2匹の一家が川をさかのぼり、安住の地を探し
求めて旅をし、その途中で危機に陥ったり、小動物との出会いがあったりと、
様々なエピソードを積み重ねていきます。動物の冒険物語でもあり、つい「ガ
ンバの冒険」や「山ねずみロッキーチャック」などの動物冒険アニメを思い出
しましたが、ゆったりした展開で、主人公のネズミ一家のハラハラドキドキの
旅冒険は、自然、環境、家族の絆など様々なことを改めて感じさせられる物語
でもありました。

<本紹介>
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【ジャンル】競馬
【著書名】 競馬無敵の「孫子流21攻略」
【著者名】 清水成駿
【出版社】 ベスト新書
【初 刊】 2007年9月20日
【金 額】 743円+税
【カバー文】「競馬は詭道なり!」 孔明から武田信玄までを虜にした天才兵
      法家の戦略が競馬で甦る。中国春秋戦国時代の呉に仕えた思想家・
      孫武が記した兵法の戦略から、21の攻略法を紹介する。
【満足度】 ★★
End------------------------------------------------
 本書は、競馬評論家である著者の1年間の重賞レースの予想をまとめたもの。
紹介文には攻略法を紹介とは書かれているものの、あまり参考となる部分は少
なく、清水成駿らしさは多少見られるものの、個人的には物足りなかったです。

<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】小説
【著書名】 犬身
【著者名】 松浦理英子
【出版社】 朝日新聞社
【初 刊】 2007年10月30日
【金 額】 2000円+税
【カバー文】あの人の犬になりたい。そして人間では辿り着くことのできない
     心の深みに飛び込んで行きたい…。新たに切り開かれる魂とセクシ
     ュアリティをめぐる物語。電子書籍配信サービス『Timeboo
     k Town』連載を単行本化。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 房恵は本来、自分の心が人間ではなく犬であり、性同一性障害ならぬ種同一
性障害だと考える30歳の女性。その房恵が、ある時、怪しげなバーテンダー
との契約で、子犬に変身を遂げた。子犬となった房恵は、29歳の陶芸家の梓
に飼われ始めることになるが、そこで、梓の異常な家庭をのぞき見ることにな
る。兄は10代から梓に性的虐待を加え、母は兄を贔屓きして見当違いの采配
を下す。そして子犬と梓が慈しみ合うのと対照的に、兄は梓に対して卑劣な行
為を重ねてゆく……。
 『親指Pの修業時代』から14年が経ちますが、本書でも心と性についてを、
子犬となった主人公を通して描かれています。犬の目を通して描かれる人間世
界と、後半の飼い主である梓の視点は非常に興味深い作品にもなっており、5
00ページ強の分厚い作品ではありますが、一気に読まされた作品でもありま
した。

<本紹介>
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【ジャンル】小説
【著書名】 渾身
【著者名】 川上健一
【出版社】 集英社
【初 刊】 2007年8月30日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】古典相撲の大関に選ばれた男。娘と、再婚した妻が見守る中、一
      世一代の大一番の行方は。そして家族の絆は? さあ島じゅうに
      響け! 母と娘のこころの応援歌。家族の絆をもう一度確かめた
      い人に贈る、感動の長篇小説。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
 駆け落ち同然に結婚した英明と麻里は親から勘当され、地元・隠岐島中に知
れわたり周りからは冷遇される。しかし、英明は島で盛んな相撲を取ることに
よって人々に受け入れてもらおうと真面目に相撲の稽古に励む。その麻里が若
くしてがんで亡くなり、親友の多恵子は麻里の娘・琴世の面倒を見ているうち
に英明との間に恋が芽生え、後妻となった。やがて英明の努力が認められ、島
根県内で出雲大社に次ぐ格式を誇り千年の歴史を持つ水若酢神社が20年に一
度奉納する隠岐古典相撲大会の出場力士に選ばれる……。
 物語は、古典相撲を題材とした家族の絆を描いた作品ですが、緊迫感ある取
り組みの情景と、応援に熱狂する人々の様子は新鮮で、純粋な相撲の姿が描か
れ、手に汗握る攻防が見られます。そして、相撲を通して真の家族になる姿は
大きな感動を覚えました。

【さ行】

<本紹介>
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【ジャンル】小説
【著書名】 幸福(しあわせ)日和
【著者名】 盛田隆二
【出版社】 角川書店
【初 刊】 2007年10月31日
【金 額】 1800円+税
【カバー文】出版社に勤める花織は、結婚も決まり、幸せな日々を送っていた
      が、挙式直前、相手の女性問題を知る。うちひしがれる彼女を、
      新雑誌の編集長・白石は、やさしく包み込んでくれるのだった…。
      妻子ある男との恋を綴る恋愛小説。
【満足度】 ★★☆
End------------------------------------------------
 出版社で編集総務をしている25歳の花織。結婚式を翌月に控えたある日、
相手に女がいることが発覚。悩んだ末に婚約解消、苦しいとき、話を聞いてく
れたのが新雑誌の新編集長だった。
 物語は、挙式直前に結婚相手の女性問題を知り、婚約を解消した主人公と、
妻子ある編集長との不倫を描いた作品。都合が良すぎる展開でもあり、不倫が
あまりにもアッサリと描かれていて、もう少し不倫の葛藤などを交えるべきだ
ったようには思います。男女で読み終わった後の感じ方は違うとも思いますが、
どうもイマイチという感じでした。

<本紹介>
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【ジャンル】ハードボイルド
【著書名】 ゾラ・一撃・さようなら
【著者名】 森 博嗣
【出版社】 集英社
【初 刊】 2007年8月30日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】孤独で気儘な探偵・頸城悦夫のもとに元都知事の大物タレントの
      館にある「芸術品」を取り戻して欲しいという依頼が舞い込む。
      若く美しい依頼人。冴え渡るはずの勘が、瞬く間に鈍っていく…。
      新感覚ハードボイルド。
【満足度】 ★★☆
End------------------------------------------------
 孤独で気ままな探偵・頸城悦夫の元に、タレントで元都知事の法輪清治郎か
ら「天使の演習」という芸術品を取り戻してほしい、という依頼が持ち込まれ
る。クライアントは志木真智子という、若く美しい女性。母親の貴子は法輪の
元愛人らしい。しかも真智子は、今、世界的に有名になっている殺し屋の“ゾ
ラ”が次にねらっているのが法輪清治郎だというのだ。法輪の本を出したい編
集者であると偽って、頸城は法輪に近づくが、同時に真智子にも魅入られ、ど
んどんはまっていく。法輪に気に入られ、法輪邸に滞在して取材することを許
可された頸城は、「天使の演習」のありかと、法輪の周囲に起きる不穏な事件
の真相を探り、ゾラの殺人予告に立ち向かう。
 本書は、森作品の探偵キャラが主人公の物語で、外伝といった感じを受けま
したが、これまでの森作品とはやや異質的な感じも受けました。作品としては
読みやすかったものの、謎解きはすぐ終わるし、結局犯人は逃げてしまうしと、
物足りなさは感じました。

<本紹介>
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【ジャンル】教育
【著書名】 ザ・小学教師
【出版社】 宝島社(別冊宝島Real 074)
【初 刊】 2007年9月9日
【金 額】 1200円+税
【カバー文】小学校という閉ざされた聖域で、いま何が起こっているのか? 
      「変貌しつつある教育の最前線」という意味合いから、「小学校」
      及び「小学教師」にスポットを当て、現場で懊悩する先生たちの
      本音を通して問題点を眺め直す。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 本書では、学級崩壊、イジメ、通知表、不登校、クラス分け、教育改革、A
DHD、児童虐待、親のクレーム、ロリコン教師、教育格差、えこひいき……
などなど昨今の教育現場での様々な問題点を取り上げていますが、学校にしろ
親にしろ行政にしろ先生自身にしろ、全てが病んでいる印象を強く受けました。
教師側の問題でも、ロリコン教師、不登校教師、エリート意識、職場結婚、教
師の不倫、職員室の嫌われ者、現場派と出世志向派、団塊の世代問題……など
が書かれ、これを読むと、社会不適応だから学校の教員になったのか、それと
も先生になったから社会不適応になったのかと今の絶望的な教育環境の現実が
あり、これでは教育改革をすることすら難しいかもしれないだろうし、一方の
親や生徒の方の問題も指摘しています。でも、本書で書かれている現実の教育
現場を見ると、日本の教育システムそのものを変えなきゃならないんじゃない
かとも思いました。

【た行】

<本紹介>
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【ジャンル】ハードボイルド
【著書名】 挑発者
【著者名】 東 直己
【出版社】 角川春樹事務所
【初 刊】 2007年6月8日
【金 額】 1900円+税
【カバー文】現代のエスパーを自称する男の欲望。華やかなクラブ・キャスト
      たちの闇の顔。その狂気が生み出すものは? 人を欺くために、
      自分を欺く。偽りの貌と心を手に入れた者は、いったい何を求め
      るのか? 私立探偵・畝原シリーズ。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
 人を欺くために、自分を欺く。偽りの貌と心を手に入れたものは、いったい
なにを求めているのか。私立探偵・畝原は、美咲興産という会社の専務から、
父親である社長を救ってほしいと依頼された。社長である美咲が、マスコミで
持て囃されているエスパーを自称する人物に惚れこみ、我を失っているという
のだ。クラブの客を装い、エスパーこと巽と社長に接近した畝原は、巽の虚言
と嘘だらけの経歴を暴くことに成功した。だが、そこから連鎖するように畝原
の周りで事件が起こり始めた……。
 私立探偵・畝原シリーズの最新作で、テンポは相変わらず良く、スリリング
ではあるものの、今回はまとまりに欠ける内容で、最初から新手のカルトの教
主を敵に回したことで、執拗で陰湿な逆襲の危機に家族ごと曝されて、一気に
読み手としてのテンションも上がりましたが、読み進むにつれてそのテンショ
ンが下がっていく感じです。作品としては悪くはないものの、シリーズの良さ
を知っているだけに、やや中弛みに感じました。

<本紹介>
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【ジャンル】小説
【著書名】 転生
【著者名】 篠田節子
【出版社】 講談社(KODANSHA NOVELS)
【初 刊】 2007年10月4日
【金 額】 880円+税
【カバー文】謎の死から十数年。チベットの寺院で金色のミイラ、ラマが甦っ
      た。食べ物と女にうつつを抜かすラマは、かつての高僧とは別人
      のよう。寺院の小僧・ロプサンは、なんの因果かラマの危険な亡
      命に付き合うはめになって…。
【満足度】 ★★
End------------------------------------------------
 篠田節子としては珍しいノベルスですが、カバーの裏に『十六年ぶりのノベ
ルズである。そして最後のノベルズである。小説家志望の一公務員であった私
の原稿を読み、本にすることを約束してくれた編集者、宇山日出臣さんが昨年
亡くなった。「美しく壮大な謎を」という宇山さんの言葉は、未だに小説を書
くに当たっての羅針盤のような役割を果たしているが、実際のところ、十六年
かけて、講談社ノベルズからも宇山さんの求めた物からも、遠く離れた所にや
ってきた。その遠く離れた地点から、読者と、故宇山さんに、この作品を発信
したい。トリックも探偵も出てこないが、「謎」は仕掛けた。解けることのな
い謎ではある。』と記されていますが、中国の干渉下で苦しみながらも逞しく
生きるチベット人達の姿が描かれた作品ですが、ノベルスというせいか、作品
も重みは感じず、展開も淡々としすぎていて、まとまりのない物語になってい
たのは何とも残念です。

<本紹介>
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【ジャンル】短編小説集
【著書名】 東京・地震・たんぽぽ
【著者名】 豊島ミホ
【出版社】 集英社
【初 刊】 2007年8月30日
【金 額】 1300円+税
【カバー文】東京で大地震発生?。その後に来るのは悲しい孤独? それとも
      明日を生きるための勇気と希望? 「その時」露わになる、14
      人の心の奥底とこれまでの人生すべて。25歳の作家が恐れと祈
      りをこめて描いた書き下ろし短編集。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
 本書は、東京での大地震に遭遇した14人それぞれの出来事を描いた短編集。
地震の被害を直接受けた人、運良く逃れることができた人など、14の作品そ
れぞれの地震被害者は境遇も環境も違いますが、短編ではあるものの地震の恐
怖や被害者の心理が良く描けています。ただし短編であるがゆえの欠点でもあ
るでしょうが、あまりにも作品が短くまとまりすぎていて、どうせなら長編作
品にしてほしかったとは思います。

<本紹介>
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【ジャンル】ミステリ
【著書名】 追伸
【著者名】 真保裕一
【出版社】 文藝春秋
【初 刊】 2007年9月15日
【金 額】 1429円+税
【カバー文】単身赴任の悟に一方的に離婚を切り出した妻の奈美子。納得でき
      ない悟に、奈美子は祖父母の間で交わされた手紙のコピーを送る。
      50年前に殺人容疑で逮捕されていた祖母と無実を信じた祖父。
      ふたりの手紙に語られた真実とは…。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
 山上悟は仕事でギリシャに赴任したものの、妻の奈美子は同行を拒否、一方
的に離婚を切り出す。納得できない悟に対し、奈美子は祖父母の間で交わされ
た手紙のコピーを送る。約50年前、祖母は殺人の容疑で逮捕されており、手
紙には、悟と奈美子の関係を二重写しにするような、誰も知ることのない真実
が語られていた……。
 物語は、全編手紙のみの構成で、主人公と妻との往復書簡、そして妻の祖父
母の往復書簡と二組の夫婦の思いが描かれる作品で、夫婦が取り交わす手紙に
よって謎が少しずつ解かれていく物語になっています。最近の携帯電話やメー
ルではなく、手紙文の良さも文章から伝わってきますが、真保裕一としては異
色の作品であるとは思うものの、ミステリと夫婦間恋愛をうまくまとめた作品
となっています。

<本紹介>
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【ジャンル】サスペンス
【著書名】 鉄槌
【著者名】 高田 侑
【出版社】 双葉社
【初 刊】 2007年11月25日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】青空に白球を追った遠い日の午後。それは母を失くした日の記憶
      …。失踪した母が戻ってきた。そして本当の悲劇が始まった。母
      と子の愛憎、家族の絆を描く慟哭のサスペンス。
【満足度】 ★★★
End------------------------------------------------
 母親が20年前に家を出てから、3人の子供を育てた父親が急死。そして子
供達は母親を探し出すが、その母親は痴呆が進み、得体の知れない男と一緒だ
った……。
 物語は、失踪した母親との再会からの悲劇が描かれたサスペンス。父親との
家族の絆は非常によく描かれていましたが、母親が過去も含めてやや曖昧な部
分も多く、物足りなさも複数ありました。独特のホラーサスペンスは高田侑ら
しさとも思えましたが、ラストも含めてスッキリしないところが多く、やや期
待ハズレでした。

<本紹介>
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【ジャンル】ミステリ
【著書名】 第四の闇
【著者名】 香納諒一
【出版社】 実業之日本社
【初 刊】 2007年9月25日
【金 額】 1800円+税
【カバー文】インターネット心中で妻を失い、事件が不可解な進展を見せ始め
      た折、「私」のもとへ正体不明の人物から電話が入る。事件の闇
      はマスコミへの犯行声明をもって公開殺人へと変貌を遂げ始め…。
      『ジェイ・ノベル』連載を単行本化。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 インターネット心中で妻の恭子を失い、ネット古本屋を営む「私」――新田
は、心中事件を追っていた旧知のライター、小杉の切断死体を発見する。恭子
と運命を共にした女性の弟であるジローや、渋谷のアウトサイダー仲間らと私
は事件を探り始める。小杉より前にも、ネット心中サイト主宰者などが同様の
殺され方をしていたことが判明。事件が不可解な進展を見せ始めた折、私のも
とへ正体不明の人物から深夜に電話が入る。電話の主は「過去に抱えている闇
を理解しろ」と挑発、その後も執拗に自己中心的な発言を繰り返した。事件の
闇はマスコミへの犯行声明をもって公開殺人へと変貌を遂げ始めた。
 物語は、ネット心中事件の深い闇を追った作品です。作品的には面白い設定
と展開だとは思いますが、これまでの香納作品と比べると多少インパクトが欠
けていた感があります。ただ構成は相変わらず巧いですし、テンポも非常に良
かったです。

<本紹介>
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【ジャンル】経済
【著書名】 寅さんは税金を払っていたのか?
【著者名】 大村大次郎
【出版社】 双葉社
【初 刊】 2007年11月10日
【金 額】 1300円+税
【カバー文】税金を知れば、社会の仕組みが見えてくる。フリーターの寅次郎、
      企業経営者のタコ社長、自営業の「くるまや」、サラリーマンの
      博など、お馴染みの人たちを使って税金をわかりやすく説明する
      税金入門書。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 国民的映画『男はつらいよ』の寅さんは、今で言うフリーター。ちゃんと税
金は払っていたの? 会社経営者のタコ社長、サラリーマンのひろし、自営業
者のおいちゃん、パートのさくらと、「寅さん」の世界で、日本の税金の仕組
みを簡単に学んでいく。
 税金入門書ともいえますが、それよりも寅さん雑学本的な感じで非常に面白
かったです。寅さんの住民税はどうなっていたか? くるまやの固定資産税は
? などなど、元国税調査官が国民的映画「男はつらいよ」の登場人物を引き
合いに、複雑で分かりにくい日本の税金システムを優しく解説しており、読み
物として楽しめました。

<本紹介>
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【ジャンル】エッセイ
【著書名】 妻と罰
【著者名】 土屋賢二
【出版社】 文藝春秋
【初 刊】 2007年9月30日
【金 額】 1381円+税
【カバー文】我が家には、逆らうと吠えたり、噛み付いたり、「罰」を与える
      猛妻がいます?。よく転び、身体も気も弱く、常に危険と隣り合
      わせなツチヤ教授の日々の生活を綴ったエッセイ。『週刊文春』
      の連載「ツチヤの口車」を単行本化。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 本書は、日々の中で、妻との間に起こった出来事を中心にまとめたエッセイ
ですが、つい吹き出してしまうエピソードが多かったです。中でも面白かった
のは、自身の体験をパソコンのサービス係の立場から書いた「パソコンのサー
ビス係の身になってみた」は、パソコンのサポートセンターとのやり取りが書
かれていますが、これが爆笑ものの内容で、パソコンの調子が悪くてサポート
センターに電話するも、エラー状況を確認して説明するものの、埒が空かず、
再インストール後も問題解決しないやりとりは、笑ってしまいます。エッセイ
としての文章の上手さもありますが、共感できるところも多かったです。

【な行】

<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】犯罪捜査
【著書名】 似顔絵捜査官の事件簿
【著者名】 坂本啓一
【出版社】 中経文庫
【初 刊】 2007年6月5日
【金 額】 495円+税
【カバー文】なぜ写真より似顔絵のほうが情報が集まるのか? 似顔絵は10
      0%似ていないほうがいい!? 一本のシワが決め手になる!?
      ……似顔絵捜査の第一人者だから書ける事件の舞台裏。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
 著者は、似顔絵捜査の現場にいた元滋賀県警鑑識課警察官で、捜査の体験談
も豊富に盛りこまれた事件簿で、知らなかった似顔絵捜査の実態が書かれてい
ます。似顔絵捜査の基礎講座や顔の不思議など、文庫本にしては中身が詰まっ
た一冊といえます。

【は行】

<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】小説
【著書名】 BOSS
【著者名】 堂場瞬一
【出版社】 PHP研究所
【初 刊】 2007年10月24日
【金 額】 1500円+税
【カバー文】「これが野球です」「これも野球なんだよ」 メジャーリーグを
      舞台に繰り広げられる、組織(チーム)を率いる男たちの熱き闘
      い。勝負はグラウンドの中だけではない?。月刊文庫『文蔵』連
      載を加筆・修正したもの。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
 ニューヨーク・メッツのGM(ゼネラル・マネージャー)に就任した高岡脩
二。「野球はいかに効率よく点を取り、失点を少なくするか」……データ重視
の彼は、投手力、出塁率に着目しチームの主砲すら放出し、理想のチームを編
成してシーズンに挑む。かつて高岡を育てた球界の重鎮アーノルド・ウィーバ
ーもアトランタ・ブレーブスのGMとして現場に復帰する。はやくもメディア
は師弟対決と盛り上がるが……。
 物語は、グラウンドに立たないGMという立場でチームを率いる二人のかけ
ひき。選手、監督との確執。更にはチームのオーナーとの関係なども交えて、
リーダーとして人を動かし、活かし、導くこと、そして勝負に勝つことの真の
意味をスポーツ小説として見事に表現しています。著者は野球小説もこれまで
に『大延長』や『いつか白球は海へ』や『ミス・ジャッジ』などで書かれてい
ますが、大リーグが舞台の『ミス・ジャッジ』も非常に読みごたえある野球小
説でしたが、本書は野球とビジネスの側面からの大リーグというものを読むこ
とができますし、ベースボールの魅力が詰まっています。

<本紹介>
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【ジャンル】小説
【著書名】 Hello,CEO
【著者名】 幸田真音
【出版社】 光文社
【初 刊】 2007年9月25日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】リストラ計画に飲み込まれた27歳の藤崎翔は、会社を辞めて信
      頼する上司や同僚たちとともにベンチャー企業を立ち上げ、社長
      に就任するが…。経済小説の第一人者が贈る「青春起業小説」。
      『Gainer』連載を単行本化。
【満足度】 ★★☆
End------------------------------------------------
 藤崎翔は外資系のクレジット・カード会社に勤務する27歳。米国本社の意
向による大幅な組織改革としての大規模なリストラ計画に飲み込まれた翔は、
信頼する上司や同僚達と共に会社を去り、ベンチャー企業を立ち上げる決意を
する。既成の概念から抜け出した新しいビジネス展開を模索する翔たちだが、
なぜか最年少の翔が社長をすることに……。
 物語は、サラリーマンからベンチャー企業を立ち上げてのサクセスストーリ
ーではあるのですが、作品としては読みやすいものの、起業での汗水流す苦労
などが非常に少なく、経済小説としては物足りなさを覚えました。

<本紹介>
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【ジャンル】手記
【著書名】 反転 闇社会の守護神と呼ばれて
【著者名】 田中森一
【出版社】 幻冬舎
【初 刊】 2007年6月25日
【金 額】 1700円+税
【カバー文】アングラ社会に通じ、海千山千の犯罪者から「落とし屋」鬼検事
      として恐れられた、伝説の特捜エースは、なぜ「裏」世界の弁護
      人に転向したか。アウトローにしか生きられなかった男の自叙伝。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
 東京地検特捜部のエース検事として撚糸工連汚職、平和相互銀行不正融資事
件、三菱重工CB事件などを手がけた著者は、石橋産業手形詐欺事件で逮捕、
起訴され、現在上告中。様々な憶測を呼んだこの暗転の陰で何が起こったのか。
本書は、その真相を含め自らの半生を綴ったもの。検事任官後は、撚糸工連事
件などで辣腕を振るうも、捜査方針を巡って上司と衝突し、弁護士に転身。こ
こで政財界や裏社会の守護神として巨富を得るものの、派手な活躍が検察の逆
鱗に触れ、逮捕に至りしたが、様々な事件の裏側を含めた、自らの半生は非常
に読みごたえがありました。検察の国策に沿った捜査の実態や優先順位の付け
方など、我々が知ることができない内部事情も興味深かったですし、国家権力
というものも認識させられます。

【ま行】

<本紹介>
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【ジャンル】災害対策
【著書名】 間違いだらけの地震対策
【著者名】 目黒公郎
【出版社】 旬報社
【初 刊】 2007年10月15日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】あなたとあなたの家族を守るために、国内外の地震災害から学ぶ
      地震対策とは…。防災における適切な自助・共助・公助のシステ
      ムの重要性を指摘し、それらがうまく機能するための方法を提案
      する。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 本書は、日本地震工学会理事などを歴任し、東京大学教授でもある著者が、
地震に対する誤った常識や認識を指摘し、地震防災に対する考えをまとめたも
ので、防災における適切な自助、共助、公助のシステムの重要性も指摘し、被
害の抑止力を高めて、復旧・復興がスムーズにできる環境を整える大切さを提
案しています。また、地震に襲われた時にどう対処するか、災害のメカニズム、
地震の基礎知識も書かれています。

【や行】

<本紹介>
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【ジャンル】短編小説集
【著書名】 約束の地で
【著者名】 馳 星周
【出版社】 集英社
【初 刊】 2007年9月30日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】憎しみ、哀しみ、愚かさ、やるせなさ…。北の街で先の見えない
      日々を送る名もなき人々。それぞれの鬱屈が、やがて悲劇を招く。
      より深き馳ワールドの新天地を拓いた、人間の暗部を描き出す短
      篇集。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 本書は5つの作品が収録され、浦河、富川、苫小牧、函館など北海道を舞台
にした連作短編集。友人に裏切られ無一文で故郷に戻った男、母親の介護に疲
れ果てた女、夫の暴力におびえる妻……など、悲しくて切ない人生を生きる男
と女が描かれます。短編集ながら、破滅の世界を馳星周らしい世界観で表現さ
れていて、自らの出身地である浦河町や同じ管内の富川町など、地元民でなけ
れば分からないような特長を活かしており、苫小牧市の勇払原野の荒れ果てた
姿なども、実によく特徴を捉えており、新たな境地を開いた作品だとも思いま
す。

<本紹介>
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【ジャンル】金融
【著書名】 ゆうちょ銀行 民営郵政の罪と罰
【著者名】 有田哲文/畑中徹
【出版社】 東洋経済新報社
【初 刊】 2007年9月20日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】民営化すれば、郵便貯金は縮小する? 次々に新規事業に出よう
      としているのはなぜ? 「地域のサービスは低下させない」は本
      当? 熱狂から2年。こんなはずではなかった! 民営郵政の真
      相と行く末を鋭くえぐる。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
 郵政事業が民営化されましたが、自動積み立て商品が消え、振込手数料は引
き上げられ、様々な問題も浮上していますが、本書は2005年秋の民営化関
連法案の成立前からの民営化への経緯を丹念に描き、この改革が抱える問題点
と社会や市場に与えるリスクを示そうと試みています。民営化直後から「顧客
情報管理システム」の不具合や年金の振込み遅延などもあり、そうしたシステ
ム問題も新聞連載だった本書の中で、以前から指摘しており、説得性のある内
容にもなっています。

【ら行】

<本紹介>
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【ジャンル】小説
【著書名】 REVERSE リバース
【著者名】 石田衣良
【出版社】 中央公論新社
【初 刊】 2007年8月25日
【金 額】 1500円+税
【カバー文】ネットで出会い、心を通わせた男と女。しかしふたりは、自分の
      性別を偽っていた。一度送ったメールは二度ともとにはもどせな
      い。やり直しがきかない、人生のように…。
【満足度】 ★★★
End------------------------------------------------
 20代後半の千晶と秀紀は、ネットで知り合い、それぞれ性別を偽ってメッ
セージ交換を繰り返し、仕事や恋の悩みを打ち明けあううちに、誰よりも互い
を理解しあう存在となっていく。実際に会って話をしてみたいという思いが募
る一方、今さら異性を演じていることを明かすこともできず、それぞれに苦悩
する……。
 物語は、著者初のネット連載小説の単行本化で、ネット恋愛を描いています
が、個人的には、メールでのやり取りで双方惹かれあう姿を両者の心理と共に
細かく描いてほしかったとも思いますし、また作品を面白くするための設定だ
ったのかもしれませんが、ネット利用者として不自然に感じる箇所も幾つかあ
り、展開としてはイマイチ的な部分はありましたが、石田衣良らしい読みやす
さはありました。

<本紹介>
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【ジャンル】ミステリ
【著書名】 ロスト・チャイルド
【著者名】 桂 美人
【出版社】 角川書店
【初 刊】 2007年6月30日
【金 額】 1300円+税
【カバー文】“すべての生物は卵から生まれる…”その源に秘められた「悲劇」
      と「希望」とは? 東京都監察医務院が突然、武装グループに襲
      撃された。人質となった女性助教授・神ヒカルは、遺伝子医療を
      巡る謀略戦に巻き込まれていく…。
【満足度】 ★★★
End------------------------------------------------
 法医学教室の助教授・神ヒカルは、監察医務院で外国人グループの襲撃にみ
まわれる。次々と犠牲者が発生するなか襲撃犯のターゲットは、解剖室に運ば
れた女性国際スパイ・ジュリエットと判明、その死体にはある機密が隠されて
いるという。さらに彼らはヒカルのことを知っていた。誰にも触れられたくな
い、あの忌まわしき過去のことも……。襲撃犯の真の目的とは一体何なのか?
 そして、ヒカルにまつわる悲劇と驚愕の秘密とは?
 物語の設定は非常に良いのですが、展開はかなり強引で、そのためまとまり
に欠けていたのは残念です。第27回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作とのこ
とで、期待して読み始めましたが、物語で描かれる3人称の視点も集中してお
らず、もう一捻りしてほしかったです。

【わ行】

 

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