書評データベース(2008年度11月分)
■2008年11月に紹介した本■
少年曲馬団 花村萬月 講談社
世界認識のための情報術 佐藤 優 株式会社金曜日
サザエさんの東京物語 長谷川洋子 朝日出版社
心臓に毛が生えている理由 米原万理 角川学芸出版
総理の辞め方 本田雅俊 PHP新書
サハラ 笹本稜平 徳間書店
野球の国のアリス 北村 薫 講談社
焼かれる前に語れ 岩瀬博太郎/柳原三佳 WAVE出版
ワンス・アポン・ア・タイム・イン東京(上下巻) 楡 周平 講談社
腕貫探偵、残業中 西澤保彦 実業之日本社
家族の昭和 関川夏央 新潮社
緊急地震速報 渡辺 実 角川SSC新書
激震!大相撲ヤミの真相 荒井太郎 ゴマ文庫
奇跡のリンゴ 石川拓治 幻冬舎
あなたの隣の<モンスター> 齋藤 孝 NHK出版
甘粕正彦 乱心の曠野 佐野眞一 新潮社
うたうひと 小路幸也 祥伝社
女ひとりで親を看取る 山口美江 ブックマン社
女はかくもままならぬ 中村うさぎ 角川書店
女たちの内戦 桂 望実 朝日新聞社
「愛」なき国 介護の人材が逃げていく
NHKスペシャル取材班&佐々木とく子 阪急コミュニケーション
アカペラ 山本文緒 新潮社
誰が疑問符を付けたか? 太田忠司 幻冬舎
誰も教えてくれない地デジTVの裏側 保岡裕之 実業之日本社
探偵裏物語 小原 誠 バジリコ
【あ行】
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】新書
【著書名】 あなたの隣の<モンスター>
【著者名】 齋藤 孝
【出版社】 NHK出版
【初 刊】 2008年5月10日
【金 額】 660円+税
【カバー文】いきなり怒鳴る、殴る、蹴る…こうしたキレる大人が増えている
! 日本人を蝕む、心のモンスター化という現実。日本社会は、
どこへ向かおうとしているのか。「モンスター化」の概念を提示
し、日本社会の変質の手がかりを探る。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
本書で書かれるモンスターは、キレやすい人、いわゆる「モンスターペアレ
ンツ」と呼ばれる、自分が正しいと思い込んでいて対話が難しいキレた人のこ
とを言いますが、自分で客で金さえ出せば何でも許されると勘違いしている人
達の実例を挙げながら、モンスターの概念を提示し、日本社会はどこへ向かお
うとしているのかを書いたもの。中でも日本人の美徳については、かつては協
調性の中で社会が動いており、公衆の面前で激怒するなど恥ずかしいことであ
ったものの、恥を恥と思わなくなくなった現代への警鐘を鳴らしていますが、
日本人の美徳というもの、日本人気質というものもっと考えるべき時代ではな
いかと思いました。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】大河ノンフィクション
【著書名】 甘粕正彦 乱心の曠野
【著者名】 佐野眞一
【出版社】 新潮社
【初 刊】 2008年5月30日
【金 額】 1900円+税
【カバー文】関東大震災後の戒厳令下、社会主義者・大杉栄一家を虐殺し獄に
堕ちた元エリート憲兵。だがその異能と遺恨は、満州の闇世界で
乱れ咲いた…。凄絶な自死とともに葬られたはずの大杉事件の
「真相」を、新資料・新証言で描破する。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、無政府主義者の大杉栄らを殺害したとして「主義者殺し」の烙印を
押されてきた甘粕正彦の事件の真相と生涯についてを迫ったもの。関東大震災
直後の混乱の最中に起きた大杉事件では、軍法会議で犯人とされ服役した甘粕
のその後、満州で謀略工作にかかわり、「満州国の夜の帝王」とまで呼ばれる
ようになるまでを、膨大な資料や関係者への取材をもとに、終戦直後に満映関
係者のために逃走用の貨車や退職金を準備したエピソードも含めて、実像を追
っています。著者らしいノンフィクションであり、取材の丹念さが文章にうま
くまとめられています。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】短編小説集
【著書名】 うたうひと
【著者名】 小路幸也
【出版社】 祥伝社
【初 刊】 2008年7月30日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】国を代表するロックバンドのギタリストで、「weeping
i
n the
rain」が代名詞だった俺。それなのに…。「クラ
プトンの涙」など、恋人に、友達に、きっと伝えたくなる、7つ
のやさしい物語。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、音楽をテーマに7つの作品が収録される短編集。いずれの作品の主
人公も、音楽を仕事としている人達の物語で、音楽の喜びや苦悩を、切れ味良
い短編として描いています。著者初の短編集のようでもありますが、インパク
トのある作品が多く、特に最後に収録され、ザ・ドリフターズをモデルとした
「明日を笑え」は非常に良かったです。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】手記
【著書名】 女ひとりで親を看取る
【著者名】 山口美江
【出版社】 ブックマン社
【初 刊】 2008年1月15日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】父は再婚せず、私は結婚せず、ずっとふたりで暮らしてきた。父
の心が壊れていく日々はあまりにもヘビーで、そして、儚くも愛
おしい…。いつか誰もが、親を看取るときが来る。アルツハイマ
ーの父親の介護の日々を綴る。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、30年近く2人で一緒に暮らしてきた父親が、突然アルツハイマー
病を発症となり、その父親が亡くなるまでの2年間、奇妙な言動に翻弄されな
がらも、今できる最善のことは何かを考え続けた著者の自伝。芸能界から一線
を引いた著者ですが、父親を介護していたということは本書を読むまで知りま
せんでした。本書では、その介護の様子や経緯が書かれ、そして自分の親を看
取るという現実問題を率直に書いています。少子高齢化が益々進み、我々もい
つかは親を看取る時が来るでしょうが、このような介護姿勢でいられるかどう
かフト考えてしまった一冊でもありました。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】エッセイ
【著書名】 女はかくもままならぬ
【著者名】 中村うさぎ
【出版社】 角川書店
【初 刊】 2008年4月30日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】努力すれば報われるのかもしれないけど、女の人生、ままならな
いことばかり。しかし、懲りずにめげずに、欲望のおもむくまま、
浪費の道を突っ走る…。暴走女王がもの申す! 『Chou
Ch
ou』連載に加筆訂正し単行本化。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
本書は、女性をテーマに、業の深さ、客観性の欠如、美醜への執念、過剰な
自意識などの痛い部分に焦点を当てたエッセイ。自分の痛さも本人は書いてい
ますが、改めて中村うさぎの欲望へのパワーというものも感じました。男性が
読むよりも、女性が読めば、納得する部分も多いのでは?とも思いますし、か
なり自分の身を切って、それをネタとしての面白さがありました。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】連作小説
【著書名】 女たちの内戦
【著者名】 桂 望実
【出版社】 朝日新聞社
【初 刊】 2007年11月30日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】女たちの戦いは終わらない…。恋愛、結婚、仕事、子育て、そし
て家族…。理想と現実の間をさまよう4人の女性たちの葛藤を描
く連作長編小説。
【満足度】 ★★
End------------------------------------------------
物語は、結婚相手を探して合コンにあけくれる29歳の真樹、家庭に安住し
ながらやりたい仕事を模索する34歳の佳乃、望んだわけでもなくバリバリの
キャリアの道を歩む39歳のめぐみ、離婚後自分の店を持ち岐路に立たされる
45歳の治子の4人の女性が、理想と現実の間の葛藤を描いた作品。女性の我
儘と願望が強く描かれていることもあってか、登場人物のキャラクターを一歩
引いて読みましたし、読みやすくはありましたが、何とも後味がスッキリしな
い作品でした。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】レポート
【著書名】 「愛」なき国 介護の人材が逃げていく
【著者名】 NHKスペシャル取材班&佐々木とく子
【出版社】 阪急コミュニケーション
【初 刊】 2008年8月11日
【金 額】 1500円+税
【カバー文】あなたを看る人は、この国にはもういない。私たちは安らかに死
ぬことすらできないのか!? NHKスペシャル「介護の人材が
逃げていく」をベースに大幅な追加取材を行い、介護現場の深刻
な実態をレポート。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、昨年に放送されたNHKスペシャル「介護の人材が逃げていく」を
レポートしたもので、超高齢社会を支える介護の現場が、深刻な人手不足に見
舞われ、施設どうしの人材争奪戦や、その裏で職員が次々と職場を去っていく
現状の現状と、どうしてこのような事態に至ったかを探り、介護の現状を浮き
彫りにしています。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】小説集
【著書名】 アカペラ
【著者名】 山本文緒
【出版社】 新潮社
【初 刊】 2008年7月20日
【金 額】 1400円+税
【カバー文】無職で病弱な弟と暮す50歳独身の姉。20年ぶりに田舎の実家
に帰省したダメ男。じっちゃんと2人で生きる健気な中学生。静
かにそーっと生きている彼らの人生を描き、温かな気持ちと深い
共感を呼び起こす珠玉の小説集。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
著者久々の小説で、ファンとしても待ちに待った小説集。これまでの作品と
比べると文章などが多少異質的ではあったものの、物語での日常の変化を上手
く表現しています。収録されている3つの作品共、少し形が欠けた家族の姿が
描かれているのですが、そこに描かれる家族の愛情は、読後に余韻が残ります。
鬱病との闘病から約5年ですが、よくここまで作品が描けるまでになったと思
いますし、エッセイや闘病記は読んできましたが、小説を待ち望んでいたファ
ンとして「お帰りなさい」と言いたいです。
【か行】
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】エッセイ
【著書名】 家族の昭和
【著者名】 関川夏央
【出版社】 新潮社
【初 刊】 2008年5月25日
【金 額】 1500円+税
【カバー文】暗い夜もにぎわっていた茶の間。あの「家族」たちは、どこへ行
ったのか…。向田邦子、吉野源三郎、幸田文、そして「金曜日の
妻たちへ」。回想の家族があぶりだす「昭和期日本」の姿。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、テレビドラマ、小説、映画などで描かれた家族という断面から、昭
和という時代を取り上げたもの。時代の変化と共に、家族像も変化していきま
すが、家族の昭和史が分かりやすくあぶりだしています。でも改めて感じたこ
とですが、昭和という時代は、家族像というものが映像として、非常によく作
られていましたし、核家族化が進み、家族像が描かれにくくなった今の時代背
景が、家族ドラマが作られにくくなったということなのかもしれません。表紙
も含めて、非常に懐かしさも感じる一冊です。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】新書
【著書名】 緊急地震速報
【著者名】 渡辺 実
【出版社】 角川SSC新書
【初 刊】 2008年9月25日
【金 額】 760円+税
【カバー文】10秒あれば、生命は守れる! 「究極の減災情報」である緊急
地震速報のイロハから、防災・減災にかかわる最先端の情報・ノ
ウハウまで、生き残るための「ワン・アクション」を教えます。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
緊急地震速報とは、震度5弱以上の地震が発生した直後、揺れが襲ってくる
前に気象庁が発表する警報をテレビやラジオ、携帯電話などで発表するという
もの。緊急地震速報は日本にしかないシステムであり、本運用から1年足らず
で、まだまだ問題点や改善点も多い。しかし、地震の大きな揺れが襲ってくる
数秒から数十秒前に知ることができれば、多くの人が何らかの行動で自身の生
命を守ることができ、「究極の減災情報」であると著者は言っている。同書で
は、緊急地震速報のイロハから防災・減災にかかわる最先端の情報・ノウハウ
までをわかりやすく伝える!
本書は、緊急地震速報の問題点や改善点も含め、その情報活用法としての防
災対策などをまとめたもの。自宅にいた場合、車を運転中の場合、会社や高層
ビルにいた場合、電車内や駅にいた場合、デパートや地下街にいた場合……な
ど、10秒後に激しい揺れが襲ってくる時に、どう対処すればいいのかについ
ても分かりやすく解説しています。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】相撲
【著書名】 激震!大相撲ヤミの真相
【著者名】 荒井太郎
【出版社】 ゴマ文庫
【初 刊】 2008年6月10日
【金 額】 648円+税
【カバー文】今から97年前、力士たちは協会に対して賃上げを要求したが、
これが受け入れられないと見るや、明治44年1月場所初日の取
組を拒否。これが、大相撲史上初のストライキとなる新橋倶楽部
事件であった。ほか、破天荒な男たちが巻き起こすスキャンダル
の数々。ここ100年、土俵の内外で起こった怪事件36。
【満足度】 ★★★
End------------------------------------------------
本書は、土俵の内外で起こった36の事件を紹介。明治44年1月場所の取
組を拒否した大相撲史上初のストライキ「新橋倶楽部事件」から、平成17年
に貴乃花親方がマスコミに発表した協会改革論について、北の湖理事長は協会
批判にあたると厳重注意した騒動まで取り上げたもので、巻末には大相撲スキ
ャンダル年表も付いています。ただ、問題となっている八百長疑惑については、
八百長報道についてが少し書かれているものの、ここを掘り下げてくれればと
も思いましたし、全体的には新鮮味は少なく、それなりの内容でした。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】人物伝
【著書名】 奇跡のリンゴ
【著者名】 石川拓治
【出版社】 幻冬舎
【初 刊】 2008年7月25日
【金 額】 1300円+税
【カバー文】農薬も肥料も使わずに、たわわにりんごを実らせる農家。ニュー
トンよりも、ライト兄弟よりも偉大な奇跡を成し遂げた男の、長
く壮絶な闘いの記録。NHKテレビ番組の内容に大幅な取材を加
えて書籍化。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
サブタイトルに『「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録』ともありま
すが、絶対不可能とも言われた、化学的に合成された農薬や肥料を一切使わな
い無肥料・無農薬でのリンゴ栽培をした木村秋則氏のリンゴ栽培記録がNHK
の「プロフェッショナル仕事の流儀」で放送され、その番組内容をもとにして、
更なる取材を加えたのが本書。その木村秋則氏の生い立ちから始まり、農薬散
布で自身と奥さんの皮膚がやられたことをきっかけに、米や野菜が無農薬で出
来ることから、リンゴでもできるのではないかと無肥料・無農薬での栽培に挑
戦し、失敗の連続でドン底の生活を味わい、ようやくリンゴ栽培が身を結ぶ過
程は、食の安全が叫ばれる今日、生産者の熱意が非常に伝わり、大きな感動を
覚えました。
【さ行】
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】小説
【著書名】 少年曲馬団
【著者名】 花村萬月
【出版社】 講談社
【初 刊】 2008年7月23日
【金 額】 2000円+税
【カバー文】昭和30年代後半、東京・府中で小学1年生から4年生になるま
でを過ごした惟朔少年の早すぎる青春の日々。なんとか周囲と折
り合いをつけようとする少年が身につけた、自分のやり方とは…。
自伝的作品「百万遍」へと続く物語。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、小学1年から養護施設へ送られるまでを綴った自伝的作品で、高校
を中退した15歳からの『百万遍 青の時代』が先に発表されていますが、前
後して物語は続いていきます。貧しかった幼少期を始めとして、時代背景を交
えて懐かしくもある作品ですが、花村萬月らしく“原罪”についてを自伝的作
品の中で描いています。最近の作品は初期の頃と比べてパワーを感じるものは
少ないですが、この作品は良かったです。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】世界情勢
【著書名】 世界認識のための情報術
【著者名】 佐藤 優
【出版社】 株式会社金曜日
【初 刊】 2008年7月10日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】靖国問題、機密費、琉球処分、プーチン流イデオロギー、北朝鮮
核実験…。30のキーワードを手がかりに、著者のみがなしうる
思索と驚異的な情報術によって、日本と世界のもっともリアルな
姿を提示する。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
本書は、2005年秋の当時のロシアのプーチン大統領の来日時、政治関連
の合意文書の発表見送りという異例の事態に陥った舞台裏の検証、2006年
に核実験を実施した北朝鮮の論理と彼らが見誤った中ロの対応、そして昨夏の
沖縄の集団自決を巡る教科書検定問題や小沢民主党代表の突然の辞意表明から
今年の胡錦濤主席来日など、30のキーワードで各国と日本の関係を考察した
もので、情報の読み解きと思索の積み重ねによって、世界情勢の真相に迫って
います。
国家主義者を自称する著者が、真逆ともいえる『週刊金曜日』に書いていた
ことすら知りませんでしたが、外交問題を始めとして、国際情勢の裏側など、
非常に興味深く、読ませる内容です。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】エッセイ
【著書名】 サザエさんの東京物語
【著者名】 長谷川洋子
【出版社】 朝日出版社
【初 刊】 2008年4月1日
【金 額】 1200円+税
【カバー文】父の死と上京、東京ショック、姉妹社の船出、町子姉の大病、母
の晩年、そして別れ…。長谷川町子の実の妹が、姉の素顔と長谷
川家の波乱万丈の暮らしを明かす。
【満足度】 ★★★
End------------------------------------------------
本書は、女子大時代には文豪・菊池寛氏に師事し、『サザエさん』の制作を
陰で支え続けた実の妹の、初めての書き下ろしエッセイ。「町子姉」と長谷川
一家の、戦中・戦後の貧しくも明るくたくましい暮らしと、町子さんが亡くな
るまでの波瀾万丈のエピソードを綴っています。長谷川家の確執も記載されて
おり、遺産相続などの話も書かれていますが、タイトルから『サザエさん』の
裏話的なエッセイかと思いましたが、確執話が主だったこともあり、やや期待
ハズレの内容でした。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】エッセイ
【著書名】 心臓に毛が生えている理由
【著者名】 米原万理
【出版社】 角川学芸出版
【初 刊】 2008年4月30日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】日本人離れしたウィットやユーモア、歯に衣着せぬ毒舌で読者を
笑わせ、裏切り、挑発しつづけた米原万里の最後のエッセイ集。
『読売新聞』日曜版連載ほか、池内紀との対談なども収録。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、2年前に他界した著者最後のエッセー集。ユーモアを交え、時には
毒舌となる著者のエッセイが読めなくなるというのは、知識と教養を感じさせ
るエッセイストであっただけに、本当に残念ですが、本書で改めて著者のバイ
タリティと文章の巧さを強く感じました。本書は様々なエッセイを集めたもの
で、その分書かれている内容も非常に多岐にわたっていて、時事ネタや歴史文
化、更には家族や食についてまで興味深い話が続き、印象深いエッセイ集です。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】新書
【著書名】 総理の辞め方
【著者名】 本田雅俊
【出版社】 PHP新書
【初 刊】 2008年7月29日
【金 額】 840円+税
【カバー文】稀に見る長期政権を担いながら、権力の座に未練を残して辞任し
た吉田茂。名言を残し美しく退陣した鳩山一郎。大願を成就させ、
颯爽と去った小泉純一郎…。気鋭の政治学者が「散り際」を中心
に、戦後歴代首相の足跡を語る。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、戦後の歴代首相29人の引き際の足跡を辿ったもので、経歴や実績
と共に戦後の歴代首相をまとめています。改めて戦後の首相の辞め方を見てみ
ると、満足する仕事をして辞めた首相が非常に少なく、権力やスキャンダルで
の惨めな辞め方をした首相の多いこと。著者は内閣官房副長官の秘書などを経
ていたこともあって、知られざる当時の首相のエピソードなども交え、新書と
しては読みごたえがありましたし、時代背景も交えて、首相の歴史は興味深か
ったです。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】国際謀略サスペンス
【著書名】 サハラ
【著者名】 笹本稜平
【出版社】 徳間書店
【初 刊】 2008年4月30日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】見渡す限りの砂塵。傍らの突撃銃と残骸になった軍用ヘリ。そし
て、失った記憶と謎の文献…。未知の新油田を巡り、伝説の傭兵
が今、甦る! 『問題小説』掲載作品を大幅に加筆、訂正し単行
本化。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
気がついたとき、男は灼熱の砂漠の中に一人取り残されていた。名前も過去
も思い出せない。自分はいったい誰なのか。なぜここにいるのか。そばにあっ
たのは墜落した、国籍の書かれていない軍用ヘリ。残されていたのは日本人の
パスポートと、焼けただれていたアラビア語の書類。男を助けに来たポリサリ
オ戦線軍事部門総司令官ムハンマド・マンスールから、自分は「檜垣耀二」と
いう伝説の傭兵であると知らされる。男はマンスールたちとともにアルジェリ
アに飛び、日本大使館でパスポートの再発給を依頼するが、男の前に現れたの
は防衛駐在官の牛島。牛島は、鴇田一等書記官が檜垣と接触後に失踪し、行方
不明であると告げた。さらに鴇田は重大な国家機密を持ち出していた。それは
西佐原に埋蔵されているという新油田の調査結果であった。そして男と接触し
た大使達は自爆テロによって殺害される。男は自らの足取りを追ううちに、か
つての仲間たちと出会う。マルセイユに住む元傭兵隊長のアラン・ピカール、
国際的な武器商人戸崎真人。そして「檜垣」の妻であるミランダと会うために、
PTSDを治療しているジュネーブのクリニックを訪ねるが、すでにミランダは
「ヒガキ」によって連れ去られていた。自分は本当に「檜垣」なのか。次々と
襲ってくる敵の正体は。誰が仲間で誰が敵か。男はひたすらに自分を追い続け、
世界中を駆けめぐる……。
主人公の檜垣耀二は『フォックス・ストーン』『マングースの尻尾』でも登
場するキャラクターで、強いだけでなく記憶を失って弱者の立場に置かれる主
人公が、どんな思いで自分を回復していくかを描いた物語で、西サハラ、マル
セイユ、カサブランカ、東京が舞台となっています。スケールが大きく、世界
を股にかけた展開が続きますが、そのスケールが大きすぎて、上下段約400
ページというのはボリュームがありすぎましたし、少々現実離れしすぎだった
のは、ややマイナスだったようには思います。ただ、謀略小説としては楽しむ
ことができましたし、作品自体としても面白かったです。
【た行】
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】連作ミステリ
【著書名】 誰が疑問符を付けたか?
【著者名】 太田忠司
【出版社】 幻冬舎
【初 刊】 2008年7月30日
【金 額】 1700円+税
【カバー文】平凡な住宅地で簡単に人は人を殺す。不可解な殺害現場を残して…。
女優以上に美人ながら“愛知県警の鉄の女”と畏れられる景子警
部補と、新進イラストレーターの新太郎の京堂夫妻。婦唱夫随で、
8つの疑問符をあざやかに解く!
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
本書は、『ミステリなふたり』の続編となる京堂夫妻シリーズ。8つの作品
が収録されていますが、いずれも名作ミステリをもじったもので、殺人事件を
見事な推理で解決します。そして主人公の京堂夫妻の個性も非常に良いですが、
他の登場人物も個性的で、特に景子警部補の同僚はいい味出してます。ライト
感覚で読めますし、ぜひともシリーズとしての更なる続編を読んでみたいです。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】新書
【著書名】 誰も教えてくれない地デジTVの裏側
【著者名】 保岡裕之
【出版社】 実業之日本社
【初 刊】 2008年9月25日
【金 額】 762円+税
【カバー文】2011年7月に終了するアナログ放送。地上デジタル放送時代
の到来によって、人々の生活や社会はどう変わるのか? 地デジ
にまつわる素朴な疑問に答え、テレビ放送を含む情報産業の問題
点や課題を明らかにする。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
2011年7月24日、現行のTVアナログ放送が終了し、本格的に地上デジタル放送
時代が到来する。高画質・高音質・多機能が楽しめる、といいことずくめのよ
うに喧伝されている地デジだけれども、現在でも電子情報が洪水のように押し
寄せているなか、本当に必要な情報を選びとることができるのか。TV放送の裏
側には番組制作者はもちろん、国やスポンサーなど、情報をある意図をもって
流している人たちが存在する。果たして主体的にメディアに向き合い、日常的
に賢く情報活用するためにはどうすればいいのか。新デジタル情報化時代には、
より高いリテラシー能力が必要とされている。日本のTVの危うい未来像を予見
する警告の一冊。
本書は、地デジ放送についての全般というよりも、地デジが抱える様々な問
題点をまとめたもので、日本以外ではブラジルしか採用していないISDB規
格の問題や、孫コピーができないダビング10問題、総務省OBの天下り民間
企業1社が個人情報を独占するB−CASカード問題など、地デジ利権ともい
える部分を取り上げており、そこに隠れる問題点を鋭く指摘しています。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】ノンフィクション
【著書名】 探偵裏物語
【著者名】 小原 誠
【出版社】 バジリコ
【初 刊】 2008年9月27日
【金 額】 1200円+税
【カバー文】探偵、それは人生を覗き見する仕事。探偵業をつうじて経験した
こと、現在の調査業界の問題点、悪徳探偵社の見分け方など、ベ
テラン探偵が、誰もが知っている仕事の誰も知らない実態を明か
す。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
著者は、キャリア35年の現役探偵で、本書は、調査の裏話から、現代の探
偵術、調査依頼のノウハウまでを紹介したもの。以前に探偵業について書かれ
た本を読んだことがあり、その中身とあまり違いがなかったこともあって、新
鮮さがありませんでしたが、裏物語としては、実例を挙げて、それなりに読み
ごたえはありました。
【な行】
【は行】
【ま行】
【や行】
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】ファンタジー
【著書名】 野球の国のアリス
【著者名】 北村 薫
【出版社】 講談社
【初 刊】 2008年8月3日
【金 額】 2000円+税
【カバー文】野球が大好きな少女アリス。彼女は少年野球チーム「ジャガーズ」
のピッチャー、つまりエースだった。小学校卒業と同時に野球を
やめてしまったアリスは、「ジャガーズ」を取材しに来た小説家
に不思議な話を語りはじめ…。
【満足度】 ★★★★
End------------------------------------------------
野球が大好きな少女アリス。彼女は、ただ野球を見て応援するだけではなく、
少年野球チーム「ジャガーズ」の頼れるピッチャー、つまりエースだった。桜
の花が満開となったある日のこと。半年前、野球の物語を書くために「ジャガ
ーズ」を取材しに来た小説家が、アリスに偶然再会する。アリスは小学校卒業
と同時に野球をやめてしまったようだ。しかしアリスは、顔を輝かせながら、
不思議な話を語りはじめた。「昨日までわたし、おかしなところで投げていた
んですよ。」……。
本書は、少年少女でも読めるミステリを目的で作られた講談社MYSTER
YLANDシリーズで、ミステリというよりファンタジー要素の強い作品で、
「不思議の国のアリス」と「鏡の国のアリス」の世界をモチーフに、野球好き
な女の子が、左右反対の鏡の国へ行って大活躍するという物語。北村薫らしい
作品で、特に野球好きにはお勧めです。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】法医学
【著書名】 焼かれる前に語れ
【著者名】 岩瀬博太郎/柳原三佳
【出版社】 WAVE出版
【初 刊】 2007年9月25日
【金 額】 1500円+税
【カバー文】日本では年間約15万人が病院以外で「変死」する。しかしこの
国の検死システムでは「病死扱い」で処理されている現実。本当
の死因は何なのか…。声なきまま葬られていく現実を通して日本
の死因究明のあり方に警鐘を鳴らす。
【満足度】 ★★★★☆
End------------------------------------------------
本書は、日本の検死システムの杜撰さについてを司法解剖医が語ったもので、
その解剖医である岩瀬博太郎氏への取材をもとに、ノンフィクション作家の柳
原三佳氏がまとめたもの。サブタイトルには『司法解剖医が聞いた、哀しき
「遺体の声」』とありますが、年間15万体の「変死体」のうち、司法解剖さ
れるのは僅か5000体あまりにすぎないという実態、あまりにお粗末な死因
究明の現状、医療事故死はどう扱われていくのかなど、お寒い検視・司法解剖
の実態が明かされています。力士の急死問題からも、この検死システムの不備
が指摘されており、司法解剖しないことで殺人被害者が病死扱いされ、病死者
が殺人を疑われ冤罪を生んでいる実情など、驚くべき内情が書かれています。
【ら行】
【わ行】
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】小説
【著書名】 ワンス・アポン・ア・タイム・イン東京(上下巻)
【著者名】 楡 周平
【出版社】 講談社
【初 刊】 2008年2月28日
【金 額】 1700円+税(上下共)
【カバー文】「安田講堂攻防戦」の別れから30年。革命の志も理想も捨てた
2人は、息子と娘の見合いの席で、運命の再会をする…。196
8年から1999年へ。2世代の男女を通じ、日本の上流階級の
実像をあらわに描く。
【満足度】 ★★★
End------------------------------------------------
全国に50余りの病院を持ち、医療法人有川会の理事をしている有川三奈は、
30年前の安田講堂攻防戦の挫折から、権力を渇望するようになっていた。官
僚になった野心家の息子・崇に、民事党政調会長の白井眞一郎の娘の尚子との
結婚話が持ち上がると、彼女はその未来に全てを賭けようとする。一方、尚子
の父親の眞一郎も、貧しい生い立ちをバネに、権力の座を狙っており、両家の
親子は互いの利害を一致させた。しかし崇が、学生の頃から付き合っていた笹
山宣子と手を切ろうとしたことから、彼女が激怒。自分のプライドをズタズタ
にした崇と尚子に復讐を決意する。さらに三奈と眞一郎が、学生運動の時代に、
関係があったことが判明。事態は徐々に混迷を際立たせていく……。
物語は、ふたつの上流階級の、親子二代にわたる作品で、上下巻で30年が
描かれるというボリュームある内容です。しかしながら、前半の権力闘争は見
応え抜群だったものの、後半一気に尻切れトンボのようになっていき、ラスト
近くなると中途半端というか、まとまりの無さだけが残る感じでした。東大紛
争やキャリア官僚の実態や政略結婚など、興味深い話題が数多く盛り込まれる
反面、ポイントが絞られていないがために、焦点がボヤけていて、かつ登場人
物があまりにも多すぎるために、特に下巻は読んでいても疲れました。
<本紹介>
Start----------------------------------------------
【ジャンル】連作ミステリ
【著書名】 腕貫探偵、残業中
【著者名】 西澤保彦
【出版社】 実業之日本社
【初 刊】 2008年4月25日
【金 額】 1600円+税
【カバー文】立て籠もりや偽装殺人、詐欺や轢き逃げなど奇怪に思える事件も、
人間関係を解きほぐしていくと、意外にも…。嫌味なまでに冷静
沈着な腕貫男は、神出鬼没で杓子定規な市民サーヴィス課苦情係。
西澤ワールド炸裂の連作短編集。
【満足度】 ★★★☆
End------------------------------------------------
悩める市民の相談ごとが次々に持ち込まれる「市民サーヴィス課臨時出張所」
の窓口。そこで対応する職員にして、黒い腕貫を嵌めたその男は、じつに聞き
上手。相談者のこみいった個人的事情を聞きだすうちに、奇怪な事件の糸口が
…。立て籠もり? 偽装殺人? 詐欺? 轢き逃げ? などなどさまざまな事
件も、人間関係をほぐされていくと意外にも…。日常の暗部に恐ろしい罠が待
ち受けているのが人生にはちがいないが!? あっけらかんとプライベートな秘
密に迫る、嫌味なまでに冷静沈着な腕貫男は神出鬼没なくせに、杓子定規な市
民サーヴィス課苦情相談係。そんな腕貫男を慕うエキセントリックな彼女は食
いしん坊。オフタイムの腕貫のもとへ難題を持ち込むのだが…。
本書は、軽妙な筆致でユーモラスに描く、西澤ワールド炸裂の連作ミステリ
6編。短編自体非常に読みやすく、コミカルな内容でもあり、食べ物の描写も
多くて、そのグルメ内容も面白かったです。
|
|||
|
|